山中湖の標識調査からみた放鳥種と放鳥数の変遷
〜37年間に変わったこと〜

             山階鳥類研究所 茂田良光

 森林性の鳥類を対象とした夏期の鳥類標識調査は,従来あまり行なわれていない。山階鳥類研究所保全研究室(鳥類標識センター)では,山梨県南都留郡山中湖村旭が丘(35°24′N,138°52′E)の水場において1973年7月より毎年夏期を中心に森林性の鳥類の標識調査を実施してきた。ここでは1973年?2009年までの37年間に実施された調査のうち6?8月に標識放鳥されたスズメ目の鳥類について,放鳥種や放鳥個体数の変化を報告する。調査地周辺では通過種であるサメビタキ,メボソムシクイおよびエゾムシクイは除くことにする。
 調査は山階鳥類研究所員をはじめ多くのバンダー,環境省ほかの協力で実施している。ご協力頂いた方々に感謝の意を表する。今回のまとめには西教生氏に最近のデータの入力などでお世話になったので感謝したい。
 調査地の水場は標高約1,000mの別荘地にある。調査は,6?8月に数日間ずつ毎年実施された。細く流れている浅い水場に沿って1列に霞網 (主に36 mmメッシュ/12 m ) を約20枚設置し,設置場所と霞網の枚数は毎回ほぼ同じであった。水場の環境は1973年?1995年まではほとんど変化していないが,1996年には網場としている水場の全長約280mのうちの北側の約50mの左岸の低木層が伐採され,水場が明るくなり霞網が目立つようになったが,近年は以前の状態に戻りつつある。2000年頃から三島由紀夫文学館等の整備が進み,隣接した文学の森公園内のブッシュが減少した。また,ここ数年は大型哺乳類(ニホンジカ・イノシシ)が出現するようになった。調査期間における放鳥個体数の顕著な変化として以下が特筆される。
 ビンズイは増減を繰り返していたが,2005年からは1羽も放鳥されていない。
アカハラとクロツグミの増減パターンは1994年頃までほぼ同じであるが,以後は徐々にアカハラは減少傾向にある。キビタキは1990代以後,徐々に増えているが,オオルリは年変動が大きく増減ははっきりしない。1998年を境にアオジが減少し,1983年以前は記録がないノジコが増加した。アオジは2001年以後は放鳥されていない。ノジコは,1998年以後,毎年放鳥されている。伐採のあった1996年以後の数年間,一時的にカワラヒワの放鳥数が増加した。
 なお,特定外来種のソウシチョウが,2006年から毎年放鳥されるようになった。ガビチョウは2000年に放鳥されただけである。

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