カワウ成鳥の捕獲方法とテサテープによる送信機装着の耐久性
○木憲太郎1,福田道雄2,8,茂田良光3,8,佐藤達夫4,8,石田朗8,
齊藤成人8,須藤明子5,片岡宣彦6,8,木村裕一8,須川恒7,8
1 バードリサーチ, 2 東京都葛西臨海水族園, 3 山階鳥類研究所, 4 行徳野鳥観察舎友の会,
5 イーグレット・オフィス, 6 鳥類環境, 7 龍谷大学, 8 日本鳥類標識協会会員
カワウの行動圏や季節移動の実態を把握するため,2002〜2003年度および2006〜2008年度の合計5年にわたり衛星追跡による調査を行なってきた。その中で磨くことができた捕獲方法と送信機装着方法の2つの技術について発表する。
衛星追跡のためには,成鳥の捕獲が必要だが,巣内ヒナへの足環標識とは異なり困難を極めた。千葉県から徳島県までの11か所のカワウのコロニーやねぐらで捕獲を試みてきたが,4か所では捕獲困難と判断して捕獲を断念した。捕獲方法は主に,かすみ網,地上巣用トラップ,くくり罠型トラップ,無双網を用いた。このうち捕獲効率が良かったのは,かすみ網による捕獲で第六台場と弥富野鳥園でそれぞれ7羽と25羽を捕獲した。しかし,1羽も捕獲できなかった場合も多く,かすみ網を用いた7か所中3か所にのぼる。カワウの飛行コースが限定され,そのコースを見極めることが,捕獲を成功させるために不可欠だった。地上巣の場合,トラップによる捕獲が有効だが,その存在に気づかれてしまうと,帰巣しなかったり,巣の外からヒナに給餌されるため捕獲できなかった。くくり罠であれば気づかれ難いので,とまり場所として使うところが決まっていれば有効である。人が林内に入った際に,驚いて林内に落下してきた成鳥のカワウを手取りするという方法も,個体数の多いねぐらやコロニーでは有効だった。事例を紹介しつつ,捕獲を成功させるための条件について発表する。
カワウに衛星追跡用の送信機をハーネスによって装着する場合,翼膜がテフロンリボンと擦れて傷になることがある。テサテープによる背中の羽根への送信機の装着であれば,この問題は起きないが,3か月から1年という追跡期間中に,はずれない耐久性があるかどうかはわかっていなかった。そこで,ダミーの送信機を用いて,この装着方法の耐久性を試験した。半飼育下のカワウを2004年3月に2羽,2006年5,6月に4羽を捕獲し,半飼育下個体の給餌場で餌付いていた野生のカワウ4羽を2006年10月に捕獲して,ダミーの送信機を装着し,その装着状態を不定期に観察して脱落までの日数を調査した。その結果,10羽中7羽について10日以下の記録誤差で結果が得られ,最長でも81日であった。したがって,この装着方法では,衛星追跡調査に必要な3か月から1年という持続期間を得ることはできなかった。頻度分布を見てみると,30日未満と60日以上の2山に分かれた。この結果には個体の性格など,何らかの個体差が影響したことが考えられる。カワウに30g程度の追跡機器等を装着する場合,追跡期間が2か月,回収率が5割程度であれば,テサテープによる装着がカワウへの負担が少なく良い方法だと言える。しかし,追跡期間が3か月を超える場合や,高い回収率が必要な場合には,ハーネスによる装着の方が適していると言える。