北海道産メジロZosterops japonicusの亜種の再検討

茂田良光・今村知子


 北海道産のメジロは,かつて亜種エゾメジロZosterops japonicus yesoensisとして基亜種メジロとは別の亜種として記載されたことがある(Kuroda, 1951)。宇田川(1954), 黒田(1955),三島(1959)により再検討され,このうち,宇田川(1954)以外はエゾメジロをメジロの亜種として認めている。亜種エゾメジロは日本鳥類目録改訂4版(1958)には掲載されているが,日本鳥類目録改訂5版 (1974)および改訂6版 (2000)では基亜種メジロZ. j. japonicusのシノニムとされ基亜種に含められている。亜種エゾメジロは最近でも認められる場合と(例えば,Dickinson, 2003),認められない場合がある(del Hoyo, et al., 2008)。
 1999年9月下旬に北海道函館市において北海道産のメジロの調査を行い,57個体を標識放鳥することができた。これらのメジロの羽色と計測値を再検討したので結果を以下に報告する。
 合計57個体のメジロは,羽色からは個体差があり,亜種エゾメジロの特徴とされた上面の緑色が暗色で脇が淡色であるという基亜種との差は明白ではなかった。また,各部の計測値も基亜種とほとんど重複していたが,尾長と鼻孔嘴峰長には有意差があった ( p < 0.01)。また,写真を撮影した7個体のすべてで,チョウセンメジロZ. erythropleurusと同様に最外初列風切P9が長く,P8との差が明らかに小さかった。
 P8 ? P9は従来,メジロの基亜種と亜種エゾメジロの両亜種で検討されたことはなかったが,P8 ? P9を測定した北海道産メジロ13個体について,本州産の基亜種メジロ11個体のP8 ? P9と比較したところ,有意差があることがわかった ( p = 0.0062, t = 3.023, df = 22) 。
 北海道のメジロは100年前まではほとんど記録がなく,1800年代の後半以後にメジロの分布が北上し,繁殖するようになったと考えられているが(村田,1901; 山階・井上,1934),北海道のメジロは,より長距離を渡る夏鳥であることから最外初列風切 P9がより長くなったと考えられる。
 今回のサンプル数は少ないので,結論は控え,サンプル数を増やして再検討するべきであろうが,今回の再検討の結果は亜種エゾメジロの亜種分化を示唆するものといえるであろう。


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