大阪府下における淀川河川敷のオオジュリンはどこからやってくるの?
報告者:久下直哉
期 間:1997年11月下旬〜1999年12月上旬 *冬季のみ
調査者:久下直哉
調査地:新御堂大橋から十三大橋に向けて広がるヨシ原(右岸)
時 間:早朝5時〜正午
放鳥結果
|
調査 |
放鳥 |
RC |
♂(再放) |
♀(再放) |
1997年 |
7 |
125 |
3 |
56(R2) |
69(R1) |
1998年 |
1 |
19 |
2 |
6(R1) |
13(R1) |
1999年 |
7 |
181 |
11 |
77(R5) |
104(R6) |
合計 |
15 |
325 |
16 |
139(R8) |
186(R8) |
使用網:ATX2〜4枚
誘 引:オオジュリン・カシラダカ
目 的:
都会の真ん中に残されたヨシ原で、越冬
または中継として利用するオオジュリン
の渡りルートを解明する。
表1 淀川河川敷 (新御堂大橋〜十三干潟)からの移動回収 |
|
||||||
|
初放鳥日 |
種名 |
性 |
齢 |
再捕獲日 |
回収場所 |
経過時間 |
1 |
98.11.25 |
オオジュリン |
♀ |
J |
02.11.22 |
福井県九頭龍川河口 |
3年11ヶ月 |
2 |
99.12.1 |
オオジュリン |
♀ |
J |
03.11.02 |
新潟県福島潟 |
3年11ヶ月 |
3 |
99.12.1 |
オオジュリン |
♂ |
J |
00.12.01 |
山口県宇部市 |
366日 |
4 |
99.12.10 |
オオジュリン |
♂ |
J |
99.12.31 |
大阪府高槻市鵜殿 |
21日 |
5 |
99.12.10 |
オオジュリン |
♀ |
J |
01.10.30 |
静岡県沼津市浮島沼 |
1年10ヶ月 |
6 |
99.12.10 |
オオジュリン |
♀ |
J |
01.11.07 |
静岡県沼津市浮島沼 |
1年10ヶ月 |
表1は、淀川河川敷から、放鳥して移動した場所、経過時間を示している。淀川を出発し北陸方面へ2例(福井県、新潟県)、本州の西の端(山口県)、関東方面2例(静岡県)、に移動している。大阪府高槻市鵜殿を通過しているということで淀川を北上し北陸へ移動、宇部市に移動しているということで瀬戸内海側を、沼津へ移動していることで太平洋側を移動していることで、淀川を通過点または越冬地として重要な役割を果たしているのではないかと思われる。また、98年は都合により、1回しか調査することができなかったが、その1回で福井県まで3年後に移動が明確になる事もあった。また鵜殿で再捕獲された個体は距離として21kmあるところを21日で移動していることもあった。
表2 淀川河川敷 (新御堂大橋〜十三干潟)での移動回収 |
|
||||||
|
初放鳥日 |
種名 |
性 |
齢 |
再捕獲日 |
放鳥場所(放鳥者) |
経過時間 |
1 |
94.10.18 |
オオジュリン |
♀ |
A |
99.11.23 |
宮城県蕪栗沼 |
5年1ヶ月 |
2 |
96.10.18 |
オオジュリン |
♀ |
A |
98.11.25 |
宮城県蕪栗沼 |
2年1ヶ月 |
3 |
96.11.03 |
オオジュリン |
♂ |
A |
99.11.23 |
静岡県富士川河口 |
3年20日 |
4 |
97.10.26 |
オオジュリン |
♂ |
A |
02.12.02 |
茨城県管生沼 |
5年1ヶ月 |
5 |
97.12.11 |
オオジュリン |
♀ |
A |
02.12.02 |
大阪府十三干潟(久下) |
5年 |
6 |
99.11.10 |
オオジュリン |
♀ |
J |
99.12.01 |
福岡県今津干潟 |
21日間 |
7 |
99.11.04 |
オオジュリン |
♂ |
J |
99.12.03 |
静岡県浮島沼 |
29日間 |
8 |
99.11.04 |
オオジュリン |
♀ |
J |
99.12.10 |
新潟県福島潟 |
36日間 |
表2は淀川河川敷に各地から越冬のために移動してきた日時と放鳥地、経過時間を示している。
東北地方から2例(宮城県)、関東方面から3例(静岡2、茨城1)、北陸から1例(新潟県1)、
九州方面から1例(福岡県)からの再捕獲があった。
表1、表2から通過地点が共通していることが判る。例えば、表1より淀川河川敷より放鳥したオオジュリンが新潟県福島潟へ移動し、逆に福島潟から放鳥されたオオジュリンが淀川河川敷に移動してきている。同じく、静岡県浮島沼より、オオジュリンが行き来していることが明らかになっている。
ダイレクトリカバリーとして今津から来た個体は499kmを21日間、浮島から来た個体は303kmを29日間、福島潟から来た個体は488kmを36日間で移動が明らかになった。
調査を続けていると、97年に淀川河川敷で放鳥した個体が、5年後に再捕獲することもあった。それだけ、オオジュリンにとって淀川河川敷のヨシ原は越冬地または中継地点の役割を十分に果たしていることがいえると再捕獲によって解明されてきた。
<まとめ>
・淀川河川敷を基点にオオジュリンが瀬戸内海ルート、太平洋側ルート、淀川北上ルートなどが明らかになってきた。
・ 静岡県浮島沼と淀川河川敷、新潟県福島潟と淀川河川敷の行き来が解明された。
・ 福岡県今津からダイレクトから来た個体は、西からのルートなので非常に興味深い。
・ 淀川河川敷のヨシ原で5年間、利用している個体があった。
・ 淀川河川敷のヨシ原は越冬地または中継地点の役割を十分に果たしている。
戻る