2008年日本鳥類標識協会第23回大会(2008年12月13日京都御室会館)における講演要旨
鳥の重さを量ってみれば
古園由香(奈良県)
野鳥の体重を測定することで、いろいろなことがわかってくる。野鳥の体重は、栄養状態や渡りなどの影響を受けて大きく変化するはずだが、それらについてふれた文献はほとんどない。そこで、毎月の調査で取りためた手持ちの体重データを解析してみた。
調査は大阪府枚方市大字穂谷で行なった。標高250〜300mの山地で、植生はコナラが優占する落葉広葉樹林と竹林、ヒノキ林である。そこで2000年4月から現在まで毎月1回調査を行い、捕獲した鳥は、各部と体重を計測してから放鳥した。体重については、Rt、Rpにおいても計測を行なった。
今回の発表には2007年までのデータを使用した。ルリビタキにおいてデータをまとめてみたところ、その冬ごとに平均体重が毎年14.3〜16.1gの間で変化していた。2002年がこの8年間で最も重く、2004・2005年月は最も軽くなっていた。2002年と2003年は捕獲数がほぼ同じだったのにもかかわらず、2002年の方が体重差の開きが大きくなっていた。
月別でまとめたものでは、渡来当初の11月と12月は体重が軽く、1月と2月に増加し3月4月に再び減少するパターンが見られた。さらに年齢・性別に分けてみても、1月と2月の体重はどの月よりも重かった。
同日再捕においても体重を計測したところ14個体中10個体で初回捕獲時より体重が増加しており、3個体が減少していた。しかしシロハラでは逆に5個体全ての体重が減少しており、体重変化のパターンは種によって違いがあることがわかった。
近年は同日再捕や夕方暗くなってから捕獲された個体において、捕獲時だけでなく翌朝の放鳥時にも体重の計測を行なっている。その結果ルリビタキでは翌朝に放鳥した際の体重は越冬期には各月の最低値を示していた。しかし、シロハラでは越冬期の2月と3月においては最低値を示すが、渡りが始まる4月と11月には最低値を示さないものがあった。
救護された鳥の健康状態を把握するのに、バンディングで捕獲した鳥の体重はよい指標となる。各地域で体重の計測を行い、その傾向をまとめておくことは、バンディングデータの活用になると思う。しかし、地域による違いがある可能性も考慮すると穂谷の結果が他の地域でそのまま使えるとは限らないし、他所でも同様の結果が得られるのかも気になるところである。個人的にもまだまだデータが不足しているところもあるので、今回の結果を自分でも参考にしながら、これからも体重データを取り続けたいと思う。
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