新潟市福島潟におけるコジュリン繁殖個体群の規模、帰還および移動先
千葉 晃(日本歯科大学新潟生命歯学部・生物学)


はじめに新潟市北区の福島潟沿岸では1985年頃から希少鳥種コジュリン(国指定の絶滅危惧U類)が棲み着き、ごく少数が繁殖を続けている。当該地における本種の分布や個体数は、近年着手された河川改修事業の影響下にあり、プラス要因として休耕田における植生遷移が、マイナス要因として土木工事による自然環境の攪乱が推定される。モニタリング調査が行われたものの、保護や保全に役立つ知見はまだ十分とは言えない。そこで、繁殖個体群の規模と動態を把握するため、標識調査を加えた野外調査を継続してきた。今回は2010~2013年の調査結果を中心に報告する。

方法調査地(国設鳥獣保護区と河川改修工事区)への立ち入りは、予め所轄官庁から許可を得て行った。個体数の概数は、自動車による広域調査と繁殖地内におけるセンサス調査によって把握し、ナワバリ雄の確認地点を地図上に記した。これらを補うために標識調査(カスミ網210枚使用)を並行して行い、捕獲個体には金属リングとカラーリングを付して放鳥し、視認と捕獲によってその後の動向を追跡した。巣内雛も標識したが、その扱いには特別な注意を払った。

結果4年間の標識調査で得た結果は下表のように整理できる。雄成鳥が雌より多く捕獲され、初年次は雄成鳥の約半数が翌年帰還した。また、ここで生誕した雛(雌雄)もごく一部が帰還し、翌年繁殖に参加した。回収記録は静岡県と福島県から得られており、ここが越冬地の一部と思われる。




2013年度日本鳥類標識協会全国大会シンポジウム講演要旨

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