2008年日本鳥類標識協会第23回大会(2008年12月14日京都御室会館)における講演要旨

野鳥犯罪と種の識別

中村桂子(全国野鳥密猟対策連絡会)


 全国野鳥密猟対策連絡会(通称:密対連)は、1992年(平成4年)にこの京都・御室の地で発足しました。
 (財)日本野鳥の会は、30年間にわたって活動を続けて「かすみ網の捕獲目的での所持、使用、販売禁止」の法律改正をなしとげました。当初の目的は達成して「かすみ網対策会議」の組織はひとまず解散しましたが、だからといって決して密猟がなくなるわけではなく、その組織を移行し、密猟防止に向けて専門的に取りくむ目的で発足したのが密対連です。
 現在では主にホームページ「密猟110番」(※)に寄せられた情報を元に活動をし、以下のフローチャートのように全国の密猟対策の体制づくりを目指しています。 
※ http://my.formman.com/form/pc/pQB4aZoeUU91DorS/

 上記フローチャートにおいて、種や国産メジロであるかどうかなどの鑑別に、日本鳥類標識協会員に属する多くのバンダーや研究者の協力を得ています。「密猟対策には科学の力」が必要です。
全国各地には、日本野鳥の会の支部が89あり、それらの支部と、国、鳥獣行政、警察等の密猟に係わる関係機関が連携しつつ野鳥保護活動を進めています。
 2002年(平成14年)の法改正では、発足当時からの宿願でもあった「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」の中に、新たに27条という項目が設置され、極端にいえば飼養しているだけでも罰せられ、しかも罰則は今までの「倍」になりました。なお、警察庁の報告によれば、法律違反事件数が法改正前に比べると、20倍以上にもはね上がったということです。
 本年(2008年)の多くの活動は以下の事務局活動報告に示すとおりです。関係機関はもとより、密猟対策にご尽力頂いたバンダーさんを始め、あらゆる分野の皆様方に心から感謝しています。
 
■2008年(平成20年)密対連事務局活動報告
・熊本県、大阪府でメジロ鳴き合わせ会が開催され、朝日放送とともに現地調査を実施。朝日放送スーパーモーニングで全国放送される。
・東京都の依頼で鳥獣保護員全体研修会で発表、密猟対策について話す。
・警察庁を訪問、大阪、熊本県で開催のメジロ鳴き合わせ会ニュースDVDを持参、密猟防止対策への理解と協力を要請
・岡山県警訪問、違法飼養者の摘発に尽力された浦安警察署の駐在さんに感謝状を手渡す。同時に野鳥の会員と小鳥店調査を実施。
・参議院議員福山哲朗氏に会い熊本、大阪の愛玩飼養とメジロ鳴き合わせ会の件で懇談。
・環境省に対し、シンポジウムを宮城県で開催することについて東北地方の鳥獣行政への参加を要請する。
・屋久島へ再調査に。鹿児島県警本部、鹿児島県等13ヶ所の関係機関を訪問し、密猟防止対策について啓発ポスターの掲示やチラシの配布等、地域住民の全面的に協力が得られることになった。
・4月13日、 京都で定例総会を開催した。
・5月「改訂版・世界のメジロ図譜」及び「新・密猟対策マニュアル」を発行。
・密猟対策マニュアルを全国の県警本部に送付。環境省から全国の自治体に送付。
・国立国会図書館、大阪府立中央図書館の要望で「改訂版メジロ図譜」及び「新・密猟対策マニュアル」を寄贈。
・京都府ではバードウイークを中心に警察・行政・野鳥の会による密猟防止目的の合同パトロールを実施。
・参議院議員の福山哲郎氏に会い野鳥保護問題について懇談し協力を要請した。
・京都府向日町署管内で密猟メジロ5羽押収→鑑定→リハビリの立ち会い。
・大阪府の小鳥店および違法飼養者宅の現地調査。
・京都府木津署管内で密猟→野鳥3羽を押収→鑑定→リハビリの立ち会い。
・朝日放送(大阪本社)が取材、放映。
・仙台でシンポジウム開催のために実行委員会開催。
・宮城県で開催の、日本野鳥の会東北ブロック大会に出席→青森県八戸へ、警察署、行政を表敬訪問。
・大阪府の小鳥店の違法飼養による強制捜査に同行、野鳥75羽を押収→鑑定→リハビリ
・愛媛県松山市で「鳥獣保護セミナー」を主催、主管は日本野鳥の会愛媛県支部。
・京都府警を訪問し9/14のかすみ網密猟事案について積極的な取り扱いについてお願いする。
・「第16回野鳥密猟問題シンポジウム東北大会inみやぎ」を開催(11月8〜9日)。
   9日に山階研茂田良光氏によるメジロの亜種に関する講演をしていただく。 
 密対連ホームページ : 
http://www008.upp.so-net.ne.jp/mittairen


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