千葉・市川大会実行委員会委員長 原島政巳

  20161223日から24日にかけて、千葉県市川市において、第31回日本鳥類標識協会全国大会が開催されました。会場となる市川市には、行徳野鳥保護区があり、隣接する宮内庁新浜鴨場とともに“市川野鳥の楽園”の愛称で親しまれています。保護区周辺はかつては、水田や干潟・浅瀬が広がり多くの水鳥が飛来していました。高度経済成長期に東京湾岸の埋め立てが進む中、鳥などの生き物の生息地を守ろうと自然保護運動が起き、宮内庁新浜鴨場前面に1975年に保護区が造成されました。以来、環境学習の場として近隣の小学校等の多くの団体に利用されてきたほか、日本で初めての積極的な環境の維持管理が行われた保護区として、のちに続く各地の野生鳥獣の保全を目的とした場所、いわゆるサンクチュアリの手本となってきました。現在は、行徳野鳥観察舎友の会が中心となり、保護区の維持・管理、野鳥病院の運営、標識調査などの調査研究活動が行われています。

 本大会のシンポジウムでは、当地で長年にわたり実施されている水鳥の標識調査に焦点を当てました。水鳥と言ってもその分類は多岐にわたりますが、一般的に小鳥類と比べて、「長期的な個体群調査が可能」「リピート、リターン、リカバリーが出やすい」「一般観察者の目につきやすい」など、小鳥類とは異なった特徴があります。これらを踏まえ、どのような調査が実際に行われているのか、4名の講演者に発表頂きました。総合討論では、水鳥の標識調査への理解を深めた上で、水鳥調査の魅力や、カラーマーキング調査における一般観察者とのコミュニケーション・普及啓発などの課題、さらには、標識調査やバンダーが研究や保全に果たす役割について議論を行いました。捕獲技術での貢献はもちろん、バンダーが長期間同じ場所で調査を継続していることから、その土地の鳥類相や地理、関係機関との連携について明るいという強みを活かし、普及啓発や研究を円滑に進めるための支援といった観点からも、研究や保全の進展に貢献できる面が大きいのではないかとの意見が出ました。最後の閉会挨拶でも副会長の梶田氏からありましたように「バンディングがどのように社会に対して貢献できるのか」という課題は、今後もとても重要になってくると思われます。本大会やシンポジウムが、皆さんがそれらの課題を考えるきっかけとなり、標識協会のさらなる発展に少しでも貢献できることを切に願います。

 関連ページ:2016年度(第31回)日本鳥類標識協会全国大会開催のご案内 

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2016年度日本鳥類標識協会大会 概要

. 開催日

  20161223日(金・祝)・24日(土)
   主催:日本鳥類標識協会
   
共催:行徳野鳥観察舎友の会
   後援:市川市

2. 会場

  市川市南行徳市民センター
  住所:千葉県市川市南行徳1-21-1
  TEL:047-359-5451
 会場(南行徳市民センター)とエクスカーションの集合場所の位置関係及び周辺施設は、図1の通りです。
   MAP
  図1. 会場周辺図

3. 大会日程

1223日(金・祝)
 1300    南行徳市民談話室2階多目的ホールにて受付
 1330    開会挨拶 日本鳥類標識協会会長   千葉晃
              千葉・市川大会実行委員長 原島政巳
 
1345    公開シンポジウム

 「水鳥・海鳥の標識調査」~その魅力と課題を探る~

カワウのカラーマーキング -東京・千葉での調査-
 (福田道雄)
蕪島での長期的な標識調査によって解明されたウミネコの生態
 (成田章・成田憙一・富田直樹・佐藤文男・森本元・尾崎清明)
チュウジシギの地理的変異とオオジシギとの識別
 (小田谷嘉弥)
九十九里浜でのシロチドリCharadrius alexandrinus 調査と保全
 (守屋年史)
・総合討論(司会進行:澤祐介)

2016標識大会シンポジウム
写真2. シンポジウムの様子
(左から澤氏、成田氏、福田氏、小田谷氏、守屋氏)

 1600    休憩
 1605    日本鳥類標識協会 総会
 1800    懇親会(江戸前ダイニング 石亭)
         千葉県市川市行徳駅前1-27-17
行徳駅徒歩3分(263m
         電話:047-395-8481

1224日(土)
 900 一般講演

1. 大阪自然史フェスティバル2016におけるユリカモメのカラーリング調査のブース展示
 (須川恒)
2. 越冬期ユリカモメ(Larus ridibundus)における体重変化
(牛根他)
3.
瓢湖におけるキンクロハジロの標識調査について(本間他)
4.
日本産シロチドリCharadrius alexandrinus の分類と移動・渡り(茂田他)
5.
南アルプスにおけるライチョウの長距離移動(速報)(朝倉他)
      -休憩(10分)-

6. 2015
年日本ベトナム共同鳥類標識調査報告および2016年度速報(小西)
7.
福島潟におけるオオセッカの渡来状況と標識事例(千葉)
8.
新潟県長岡市におけるチャキンチョウEmberiza brunicepsの標識について(渡辺)
9.
シマアオジやカシラダカの減少と陸鳥モニタリングの重要性(尾崎)
10.
ホオジロ類(アオジ、ノジコ、クロジ、ホオジロ)1Wの初列風切換羽状況(梶田)
11.
鳥の色の個体差 〜構造色の発色メカニズムを中心に羽色の個体差を理解する〜
 (森本)

 1200 閉会挨拶 日本鳥類標識協会副会長 梶田学
 1215 記念撮影
 1230 解散
 1240 エクスカーション③東京湾岸野鳥施設めぐり出発
 1330 エクスカーション①、②集合 開始(会場:千葉県行徳野鳥観察舎)
 1500-1600 各エクスカーション終了、解散

 ※エクスカーション①:保護区観察会・野鳥病院見学
  エクスカーション②:カモメ標識調査・カワウコロニー見学会
  エクスカーション③:東京湾岸野鳥観察施設めぐり(谷津干潟、葛西臨海公園)

  エクスカーション①
  写真3. 行徳野鳥保護区で行われたエクスカーションの様子


2016年度(第31回)日本鳥類標識協会全国大会 千葉・市川大会
実行委員長:原島政巳
実行委員 :石亀明、岩崎加奈子、牛根奈々、佐藤達夫、佐藤祐子、澤祐介、鈴木裕子、
      田久保晴孝、中込哲、野長瀬雅樹、蓮尾純子、波多野晃史、原島佐記子、
      堀江聡美、三木信行、山口誠

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