鳥類標識調査から見た東北地方太平洋沖地震が宮城県へ及ぼした影響
杉野目 斉
宮城県では外洋の離島から干潟、ヨシ原、海岸林、内陸の水田や山地に至るまで様々な環境で鳥類標識調査が実施されており、鳥類の渡りや県内の鳥類相を把握するうえで貴重な情報が数多く得られていた。 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴い発生した津波は沿岸部の標識調査地に様々な形で大きな影響を及ぼした。2年半を経過した現在、標識調査地の中には自己修復機能により甦りつつあるところがある一方、姿を大きく変貌させたままの箇所もあり、そうした箇所は調査の実施が不可能なのはもとより、かつてその地を利用していた鳥類にも大きな影響を与えていると考えられる。今回は東北地方太平洋沖地震により影響を受けた宮城県の標識調査地のうち、以下について報告する。
1.ヨシ原(石巻市長面 北上川)
2.中州(石巻市小船越 旧北上川)
3.干潟(亘理町荒浜 鳥の海)
4.屋敷林(亘理町長瀞)
5.水田地帯(名取市、岩沼市)
6.海岸林(仙台市若林区)
これらの場所では、それぞれ震災前に標識調査によって、それぞれのどのような情報が得られていたのかを簡単に紹介し、地震や震災によってこれらの調査地(調査活動)がどのような影響を受けたのか、その後の調査地の環境の変化、どのように調査を継続しているのかについて紹介する。さまざまな復興に向けての諸事業は、震災前に鳥類標識調査でその意義が明らかにされていた湿地や海岸林にどのような影響をおよぼすのかに注目いただきたい。地震や津波が鳥類に及ぼした影響や復興にあたり鳥類標識調査が果たす役割などについて、広くご意見を伺えれば幸いである。
2013年度日本鳥類標識協会全国大会シンポジウム講演要旨