セグロカモメの繁殖地を探せ!
佐藤達夫(認定NPO法人行徳野鳥観察舎友の会)
日本に秋に飛来し越冬するセグロカモメは、ごく普通の渡り鳥です。しかし、繁殖地や越冬地への帰還など、あまりわかっていません。セグロカモメの繁殖地はどこなのか?どれくらい滞在しているのか?毎年同じ個体がやってくるのか?など、探るべく、千葉県行徳野鳥観察舎にて2007年から環境省の金属足環とカラーリングによる調査を開始しました。
捕獲した鳥には、右足に環境省足環、左足に白いカラーリング(黒文字で数字が刻印)を付し、体各部位の計測等を記録し放鳥した。観察舎では、標識個体の出現状況をほぼ毎日記録し、また、一般の方からの観察情報の収集も行った。2007年から6年間の結果では60羽を捕獲放鳥した。標識個体の帰還率は比較的高く、2011年度では約70%が帰還し、セグロカモメたちは越冬地へ固執するものが多いと思われる結果となった。しかし、初年度に放鳥した個体の帰還率が減少傾向である。観察舎での出現状況では、およそ半数が観察舎定着型で、毎日観察できる個体も多かった。標識個体の観察例は、東京湾奥部の三番瀬周辺で多くの個体が多数観察されており、東京湾で塒をとっていると思われる。東京湾以外では、秋の渡りの際に千葉県銚子・茨城県波崎を経由し、観察舎へ飛来する個体や春の移動の際に銚子方面を経由する個体がいることがわかってきた。
しかし、残念ながら繁殖地はわかっていない。2011年からバードリサーチの調査支援プロジェクトなど多くの方々から援助いただきジオロケータによる調査を開始し、再捕獲1羽を含む3羽にジオロケータを装着し放鳥した。昨冬(2012年度)に帰還した個体は1羽のみであったが、無事にジオロケータを回収することができた。データは残念ながら5月半ばまでの記録しか得られず、最終地点が繁殖地であるとは言えないが、観察舎を3月下旬に去り4月中旬に東北沖、北海道北部、サハリンと北上し、4月下旬から5月上旬にオホーツク海北部沿岸、そしてロシア本土に移動していったようだ。
昨冬(2012年度)は再捕獲3羽含む4羽にジオロケータを装着した。今冬に再捕獲し、データを回収できるようにがんばりたい!
2013年度日本鳥類標識協会全国大会シンポジウム講演要旨