ルリビタキにおける構造色による青色およびその他部位の色特性と
年齢・性差に関する検討
森本元(山階鳥研・自然/立教大・理/東邦大・理・東京湾セ)
ルリビタキTarsiger cyanurusは、成鳥雄の上面が青色の鳥である。本種の最大の特徴は、若い雄が繁殖可能であるにも関わらず、雌に似たオリーブ褐色の外観をしていることにある。このような成鳥羽の発現が年齢によって遅延する現象は羽衣成熟遅延(Delayed
Plumage Maturation、略称DPM)と呼ばれ、分類群を問わず、世界中の一部の鳥種に見られる現象である。このような鳥種では、鳥類標識調査においても、雌と若い雄の外観の近似性ゆえに、性別の識別が困難なケースが生じる。特に非繁殖期には、総排泄口突起の形状や抱卵斑といった繁殖期特有の識別点が利用できないため、より性判定が困難となる。
他方、鳥類はヒトとは異なる色覚特性を持つ。ヒトの眼は約400nm?700nmの波長域を知覚できるが、鳥類の知覚域は300nm?700nmであり、人間よりも広い感受域を持つ。これは人間が知覚できない紫外色を鳥が知覚できることを意味する。このため、人間の色覚による羽色評価は、鳥類の実際の知覚域における色の認識とは異なる。また、各視細胞の感受特性も鳥類とヒトでは異なっている。このため、我々人間から同色に見えても、実際には鳥には異なる色である事も起こりうる。
また、オリーブ褐色の個体の背面を眺めてみると、茶色っぽい個体や緑色っぽい個体など、個体差があることにも気がつく。こうした個体変異は、性別と関連があるかもしれない。他の部位についても、オリーブ褐色の雌雄間で、同色であるかは厳密に比較してみないと明らかでない。
そこで本発表では、分光光度計を用いて各部位を測定し、1)ルリビタキ青色雄の羽色波長特性、2)紫外色成分量の評価、3)目視にて評価した色と各雌雄の発色特性の関連性、を検討する。
2013年度日本鳥類標識協会全国大会シンポジウム講演要旨