和歌山県日高郡日高町西山における秋の渡り
熊代直生(大阪府在)


 2004年の夏に和歌山県日高町の西山で標識調査をはじめて、今年で10年を迎えます。開始当時は周年の調査も試みたりしていましたが、もともと住んでいるところから遠くの網場であるため、「秋だけは」何とか続ける、という低いところに目標を据えて、ここまで続けてまいりました。今回は節目の年に当たることもあり、西山における秋の渡りの傾向を整理して、ご紹介したいと思います。
  西山は日の岬、和田不毛、煙樹が浜など、著名な渡り鳥の中継地を眼下に控える、標高328mのピークです。尾根付近に西山ピクニック緑地が整備されていますが、人通りがほとんどなく、閑散とした公園です。ここの樹高2〜5m程度の常緑樹を主とした疎林を通る遊歩道に、いちばん低い棚を2m〜3m程度まで持ち上げた高網(主にHTX)を10枚前後張り、尾根を越えていく渡りの鳥を中心に捕獲しています。音声誘引は小鳥類および夜の鳥、各種混合の音源を、1〜2箇所のメロディシャワーで常時再生しています。
  調査時期はムシクイ類の渡りが始まる8月下旬に開始し、12月上旬までとしています。2007年にイイジマムシクイの放鳥が得られたことから、2008年以降、8月下旬〜9月上旬に絞って、複数のバンダーに協力を依頼して、連日で調査できる体制を目指しましたが、2年ほど続いたものの、次第に体制が組めなくなり、現在は月2回程度で、月1回の10月以降より多少多めに入っている、という感じになっています。
  これまで10年間の調査(2013年は継続中)で合計190日の調査を実施し、放鳥された個体は4506羽、このうち秋の渡り調査によるものが4168羽です。約3分の1の1368羽がメジロですが、これに次いで多いのがセンダイムシクイを主とするムシクイ類、キビタキなどヒタキ類を含む夏鳥で、あわせて約1500羽でこれも3分の1、残る3分の1がシロハラをはじめとする冬鳥、ウグイス、ホオジロなどの留鳥となります。これらの放鳥数は、それぞれの種類が多く渡る時期に実施した調査日数によって左右されますので、発表では調査日1日あたりの放鳥数をもって、西山における秋の渡りの傾向を、主要な各種について検討したいと思います。
また、西山におけるヨタカの出現傾向、イワミセキレイやチゴモズ、チョウセンメジロといった珍しい放鳥例等、10年間のうちに得られたトピック事項をまとめてご紹介いたします。
協力バンダー:木村麻美子、片岡宣彦、古園由香、村上亮、和田岳



2013年度日本鳥類標識協会全国大会シンポジウム講演要旨

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