2012年 日台共同鳥類標識調査 (2012.09.24 - 09.29)
茂田良光(山階鳥類研究所)
 



 日本鳥類標識協会の海外遠征はカムチャツカ,サハリン,韓国に続き,昨年度から台湾で行うことになった。台湾における初年度の共同鳥類標識調査は,2012年9月24 - 29日の日程で行った。標識調査の実施期間,調査地 (環境),および参加者は以下の通りである。
 調査期間 9月25 - 28日
 調査地  9月25・26日 高雄市南星 (海岸埋立地の防風林)
      9月27・28日 台南市七股 (曾文溪河口周辺のモクマオウ林内の3か所)
      9月27日   台南市四草 (塩田跡)
調査地のうち,台南市七股の3か所では渡り性陸鳥のモニタリング調査MMLB(Monitoring Migratory Landbirds)が行われていた。
 日本側の参加者は次の8名である。
  馬田勝義(長崎)・小倉 豪(韓国)・勝野史雄(福岡)・小西広視(東京)・真下 弘(東京)・
松本昇也(埼玉)・吉成才丈(東京)・茂田良光(千葉)
 台湾側の参加者は次の13名で,調査期間を通しての参加は,洪と李の両氏である。
  高雄市野鳥学会:洪貫捷・鄭政卿・李勝雲・張進隆・呉世鴻
  特有生物研究中心:姚正得・林瑞興・薛美莉 
  台湾シギチドリ類研究グループ:?忠?・陳尚鴻・陳志豪
 台江國家公園:?光瀛・丁敏政

 9月24日の夜は,高雄市野鳥学会の10名との懇親会と高雄市南星での標識調査結果の発表会が行われた。また,9月28日の夜に台江国家公園管理事務所でミニシンポジウムを公開で開催し,約50名が参加した。これには印刷された要旨集が配布された。ミニシンポジウムでは,台湾側と日本側の調査参加者から3題ずつの講演,および質疑応答があり盛会となった。講演タイトルについては,バンダーニュースNo.51: 6-11 (2012) を参照されたい。

調査結果と考察
 南星:放鳥数12種34羽。アカモズLanius cristatusは,25日に8羽,26日に9羽で最も
    多かったが,台湾の特別保護種に指定されているため足環を付けずに放鳥。本種は台 
    湾から4亜種が記録されているが(廖,2012),第1回冬羽の亜種の識別はできない。
    25日と26日に各1羽のムナオビミツリンヒタキRhinomyias brunneatus が放鳥さ 
    れた。本種は台湾から2007年10月に台南市七股で初観察記録,2011年9月に南星 
    で観察され(廖,2012),2012年9月15日に南星で初放鳥(洪,私信),今回の記録は 
    これに次ぐ記録。近年,分布が拡大しているらしい。
    9月26日にハイナンヒメアオヒタキCyornis hainanus 1羽が台湾から初放鳥された。
    本種は,台湾に飼い鳥として輸入された可能性もある。
 七股:放鳥数5種10羽。網はそれぞれ10枚ずつで3か所に分かれて調査。台風の影響で,
    風が強く28日には1か所は網を開かなかった。両日とも放鳥数は少なかった。
 四草:放鳥数8種18羽。台江國家公園のクロツラヘラサギ保護区に隣接した塩田跡に8枚 
    の網を張り夕方から23時頃まで調査。ムナグロ,シロチドリ,トウネンは各2羽,
    コチドリ,アカアシシギ,コアオアシシギ,アオアシシギ,タカブシギの5種は各1
    羽のみ。トウネンは成鳥冬羽と第1回冬羽の各1羽で,成鳥の1羽(足環B-37803)は,
   本年5月6日に大阪市矢倉海岸で大久保誠治氏の撮影により成鳥夏羽で確認された。


2013年度日本鳥類標識協会全国大会シンポジウム講演要旨

戻る