2011日本鳥類標識協会大会講演要旨10
オオミズナギドリの集団営巣地における定着性
島の少し離れた場所では再捕(リターン、リピート)されないのか?
須川恒・狩野清貴(冠島調査研究会)
京都府舞鶴市冠島においては、集団営巣するオオミズナギドリに1971年から継続的な標識調査を行なってきた。
ミズナギドリ類が集団営巣地内の小範囲へ定着していることは知られているが、冠島のオオミズナギドリがどの程度の範囲にどう定着しているかの検討はしていなかった。
1978年から標識範囲を島の一部の約0.6haの範囲(以下A地区と呼ぶ)に限定し、捕獲時には10m四方の方形区による位置情報の記録を行ってきた。また、A地区から約200m(130〜270m)離れた調査区(以下B地区、約0.1ha)で1988年〜1998年に標識調査が行われていた。
1984年からはデータベースを作成して2010年までの標識情報を入力している。このデータベースには、標識センターに報告する項目以外に、捕獲時刻、方形区の位置情報、捕獲場所(地表か巣内か)などを入力している。
今回は、オオミズナギドリへの島への定着性解明の第一弾として、A地区とB地区における標識記録から、それぞれの調査区での再捕(リターンおよびリピート)数に対して、調査区を超えた再捕がどの程度あるのかを紹介する。
A地区では1984年〜2010年に14881羽の個体を標識し放鳥した。この内、成鳥に標識したのは14217羽であり、巣立ち幼鳥に標識したのは664羽であった。
B地区では1988年〜1998年に2229羽の個体を標識し放鳥した。全て成鳥に標識したものであった。
A地区で放鳥した個体の再捕個体9866羽(リターン6690羽、リピート3176羽)のうち、B地区で確認されたのは9羽(0.12%、リターン8羽、リピート1羽)のみで残りはA地区で確認された。
B地区で放鳥した個体の再捕個体2498羽(リターン1636羽、リピート862羽)のうち、A地区で確認されたのは2羽(0.08%、2羽ともリターン)のみで残りはB地区で確認された。
以上のように、両地区とも多くの個体が、放鳥した地区で確認され、200mしか離れていない地区で確認されることは極めて少なく、オオミズナギドリの集団営巣地内における狭い範囲への高い定着性が示された。
地区を超えて確認された少数例を検討すると、定着していた地区を変更したというよりは、飛び立ちに失敗して他の地区に紛れ込んで確認された例が多いと思われた。