ブッポウソウEurystomus orientalis の標識調査
- 主にカラーリング付けについて -

飯田知彦(広島県)


ブッポウソウの保護の成功について
 ブッポウソウEurystomus orientalis は東南アジアを中心に分布する種で,日本には夏鳥として渡来する.近年減少傾向にあり,絶滅の危機が増大している種として,環境省のレッドリストでは絶滅危惧TB類に指定されている.そのランクは,絶滅のおそれのある鳥類としてよく知られているタンチョウGrus japonensisやアホウドリPhoebastria albatrusよりも高く,イヌワシAquila chrysaetosやオジロワシHaliaeetus albicillaなどと同ランクである.かつて中国地方は他地域と比べ個体数の多い地域とされ,木製電柱等にオオアカゲラDendrocopos leucotosが営巣した後の古巣を利用して繁殖していたが,その後,繁殖していた木製電柱等がコンクリート製の柱に交換されることにより繁殖巣穴を失い,他地域と同様,近年急激に個体数が減少した.広島県でも1980年代初頭には10つがい以下にまで減少し絶滅が危惧されたが,その後人工構造物であるコンクリート製の電話柱等に巣箱をかける保護活動が開始され,個体数が回復した.具体的には,広島県では1988年から開始された保護活動が実を結び,2008年現在,広島県の生息数だけで,少し前に推定された国内250つがい程度とされる推定生息つがい数の約90%にあたる220つがい以上が生息するまでに個体数が回復した.

カラーリングでの生態調査の開始について
 個体数が回復し,つがい当たりの調査によるリスクが低下したと思われたため,今年から本格的に環境省のメタルリングと個体識別用のカラーリングを付けての調査を開始した.その調査状況について,情報提供的に報告する予定である.今年は調査日にまだ雛が小さかったため,約1日で54羽の雛にしかリングを付けられなかったが,来年以降,毎年100羽以上を目標に標識調査を進める予定である.

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