日韓共同鳥類標識調査2007(報告)
小倉 豪・○茂田良光・小畑義之・深井宣男・渡辺靖夫・古園由香


 日本鳥類標識協会の主催により、周辺各国と共同で標識調査に関する情報交換と技術協力が実施されてきた。2005年からは韓国が対象となり、韓国国立公園渡り鳥研究センター(National Park Migratory Birds Center)と共同で調査を実施した。過去2回は秋に実施されたが、3回目の今年は春に実施されることになった。日本側からは部分参加であった藤巻夫妻を含む8名が、韓国側からはセンター職員など12名が参加した。ここでは、今回の調査の様子や標識結果などを報告する。
 
韓国行きの日程は参加者が参加しやすいようにGWの4月28日〜5月6日に組み、初回と同じくソウル集合・ソウル解散とした。調査地は前回までと同様、朝鮮半島南西端のモッポから約100q西にある紅島(Hong Do)と、紅島から19qほど半島寄りの黒山島(Heuksan Do)である。前回までの調査で、紅島より黒山島の方が、種数・個体数ともに多いことが予想され、また現地での悪天候による航路確保の都合から予定を少し変更し、前半の4月29日〜30日は紅島で、後半の5月1日〜5月5日は黒山島で調査を実施した。なお、黒山島の調査地脇に建設中であった研究センター支所が完成し、黒山島での調査も快適に実施できた。また、紅島にある研究センターを黒山島の新しい場所へ移設する計画もあるという。

紅島での調査は秋と同様で、センター裏手の急傾斜の藪、畑地脇などにカスミ網を数枚設置して行われた。2日間で16種35羽(N34 R1)が標識放鳥された。どの種も1桁の放鳥数であり、秋の調査のようにメジロが大部分を占めるということはなかった。黒山島では、調査地の湿地が人工的に回復されており、その中にカスミ網を設置した。湿地脇のヤナギ林が減っていたが、その反面シギチなども入る明るい湿地となっており、季節の違いもあって、前回までとは異なる種が記録された。5日間で46種434羽(N412 R22)が標識放鳥され、優占種はキマユホオジロ(N117, R2)、コホオアカ(N79)で、この2種で全体の45.6%を占めた。全日程の合計は、50種469羽(N446 R23)であった。また、特筆すべき事項として、尾羽の枚数からオオジシギと同定された個体の測定値が日本産のものよりかなり小さいこと、朝鮮半島で繁殖しているウグイスとオオルリの亜種が文献と異なるのではないかということがあげられる。また、ウスリームシクイPhylloscopus tenellipesとエゾムシクイP. borealoidesの種の識別や、キマユホオジロなどの性の識別についても、新たな疑問や情報などが得られた。

韓国との共同調査は今回が一区切りとなるが、日本との共通種も多く、今後もRcが期待されるとともに、繁殖している亜種の問題など興味深い事項が見出されたため、できればあと3年、共同調査を継続することを提案したい。

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