富山県とロシア沿海地方との渡り鳥共同調査

間宮寿頼・岡圭一・森洋子・木村美智子・山下眞佐子・山田一昭・湯浅輝久・湯浅純孝
(富山県渡り鳥研究会)

実施主体
相手方自治体:ロシア連邦沿海地方政府・ロシア連邦沿海地方環境保護国家委員会
 事業主体  :富山県自然保護課、鳥類標識調査者及び協力者
(富山県渡り鳥研究会、日鳥連県富山県支部会員)
:沿海地方政府天然資源委員会、ロシア科学アカデミー極東支部生物学土壌学研究室


 富山県内には、毎年、ロシアなど北方からオオハクチョウ、ユリカモメ、ツグミ、カシラダカなど多くの渡り鳥が飛来し、自然の豊かさを示すバロメータとなっている。
「渡り」の実態は、解明されつつあるが、詳細についてはいまだ分からないところもたくさん
ある。そのため、1998年(平成10年)、県レベルでの取り組みとしては日本で初めてとなる国境を越えた共同調査がスタートした。
富山県とロシア沿海地方政府とは、1992年(平成4年)8月に友好提携の調印が執り行われて以来、職員・民間人等の人的交流、学術、芸術文化など広範な分野で友好関係が一層発展してきた。また、渡り鳥に関しては、日ロ間の渡り鳥の保護を目的に締結された「日露渡り鳥保護条約(1988年)」があるが、これまで大陸や南方の国を往来する夏鳥や冬鳥、旅鳥の渡りのルート等を解明するため日本各地で標識調査が実施されてきた。
本県では、1973年(昭和48年)に富山市婦中町高塚地内に設立された国設1級婦中鳥類観測ステーションがあり、県内の鳥類標識調査者や協力者が網場周辺の調査や環境整備に従事している。現在(2006年度)までに約14万羽(再捕獲)の鳥に標識調査が行われている。
1997年に当研究会会長の湯浅純孝氏が、ロシア科学アカデミー極東支部に出かけ、協議した際、本県の渡り鳥の繁殖地並びに移動コースに位置すると考えられる対岸のロシア極東地域では経済的理由等のため、これまでソビエト時代を通して、この調査が実施されていないことを知り、協議の結果、本県で越冬または、通過する渡り鳥の保護並びに生息環境の保全に資することを目的に、ロシア沿海地方政府と渡り鳥の共同調査が実現し、今日に至っている。ロシア沿海地方のナオトカ郊外に調査基地が設置されている(一時、サハリンでも調査地を設置)。
その後、ロシア沿海地方と富山県の共同調査地での往来の記録としてはカシラダカ(♂)の1例の回収がある他、ロシア沿海地方調査地で放鳥されたジョウビタキ(♀)が愛知県北設楽郡で、東京都あきる野市で放鳥されたジョウビタキ(♀)がロシア沿海地方共同調査地で再捕獲されるなどジャパン名刻印のリングが日本海を飛び越えたと思われる回収例があったり、ロシア名刻印のリングが日本で回収されるなど、両国間の移動を科学的に実証するデータが取れるようになった。それから、本共同調査では研究者の交流だけでなく、両国の青少年の交流も2002年度から本格的にはじめ、環日本海地域で渡り鳥とおした国際交流が行われ大きな成果をえている。しかし、今年10年目を向かえ、来年度より富山県から本共同調査への資金的な援助は難しくなると思われ、今後の共同調査のあり方について協議を進めているところである。
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