尾もしくは翼の羽の枚数に変異のある個体の報告

京都大学医学部 有馬浩史

 スズメ目の鳥類種では,多くの種で,初列風切羽は10枚(最外羽は矮小化している場合あり),次列風切羽は9枚(三列風切羽を含む),尾羽は12枚である.しかし,これらの枚数に関しては,まれに同種内での変異があることが知られている.例えば,次列風切羽に関しては一般的に同種内でも時々枚数が異なることがあるとされており,また尾羽に関してもスズメ目の種を含むいくつかの鳥類種で羽の枚数が通常とは異なる変異個体の観察記録が報告されている.更に初列風切羽に関しても,次列風切羽や尾羽の場合よりも更にまれであるとは思われるものの,羽の枚数が通常とは異なる変異個体が見出されることがある.今回は,スズメ目の鳥類種において,尾もしくは翼の羽の枚数が通常とは異なる変異個体の観察記録を3例報告する.
 今回観察された3個体では,いずれの場合でも尾もしくは翼の羽の枚数が左右で異なっており,片側は正常枚数で,反対側は通常より1枚多い異常枚数であった.また,いずれの場合でも,長さや模様などの特徴が他の羽と極端に異なるような羽は見られず,外見からではどの羽が通常は見られない異常羽であるのか判断が困難であった.発表では,会場の皆様がお持ちの観察記録もお聞きして,これらの羽の枚数変異の特性や発生原因に関する議論を深めたい.

1.シロハラ Turdus pallidus
2005年4月30日 京都府大文字山.
性別:♀,年齢:第一回冬羽
左側尾羽7枚(異常),右側尾羽6枚(正常).



2.メボソムシクイ Phylloscopus borealis
2006年5月28日 京都府冠島.
性別:不明,年齢:不明.
左側尾羽6枚(正常),右側尾羽7枚(異常).



3.ツバメ Hirundo rustica
2006年8月14日 京都府宇治川.
性別:不明,年齢:成鳥.
左側初列風切羽10枚(正常),
右側初列風切羽11枚(異常).



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